乃木坂46の井上和が、ディズニー&ピクサー最新作『トイ・ストーリー5』(上映中)の日本版声優として出演する。情熱的なカウガール人形のジェシー(CV:日下由美)が旅の途中で出会う、デジカメのおもちゃ・スナッピーを演じる。1作目の日本公開から30年。時が流れても変わらない感動を届けてきた「トイ・ストーリー」シリーズ。その最新作で描かれるのは、デジタルデバイスが普及した現代における「おもちゃの危機」だ。このかつてない事態に、ウッディ(CV:唐沢寿明)、バズ・ライトイヤー(CV:所ジョージ)、そしてリーダーとして奮闘するジェシーが再び手を取り合い、ボニーの笑顔を取り戻すための冒険へと旅立つ。井上が演じるキュートで仲間想いなスナッピーは、毒舌なスマーティー・パンツ(CV:佐野勇斗)や陽気なアトラス(CV:松井ケムリ)と共に、ジェシーたちの冒険を支える重要な役割を担う。「生まれた時からすぐそばに『トイ・ストーリー』があった」と語る井上。オーディションをも突破したその瑞々しい感性と、アフレコ収録の裏側に迫った。(取材・撮影=村上順一)
あまりの嬉しさに涙

――今回、世界中で愛される「トイ・ストーリー」シリーズへの出演が決まった際、涙を流して喜ばれたと伺いました。その時の状況を詳しく教えていただけますか?
あの日は普通にお仕事をさせていただいていて、一段落して乃木坂46のメンバーとエレベーターに乗っていたんです。そうしたら「井上だけ別の撮影があるから」と呼ばれて。別の部屋に入った瞬間にカメラが回っていて、そこでサプライズで合格を告げられました。本当にびっくりしました。「トイ・ストーリー」は物心つく前から大好きで、何度も何度も見てきた作品だったので、まさか自分がその世界の仲間入りをできるなんて想像もしていませんでした。あまりの嬉しさと、「現実なのかな?」という信じられない気持ちが混ざり合って、涙がこぼれてしまいました。
――ご家族の反応はいかがでしたか?
真っ先に家族に報告しました。私の家族もみんな「トイ・ストーリー」が大好きなんです。特に母は、合格したことを伝えると「あの世界に入るのだから、全てをかけていってらっしゃい」と背中を押してくれました。母が何よりも喜んでくれたことが私にとって一番の幸せで、「決まって本当に良かった」と心から思いました。
――井上さんにとって「トイ・ストーリー」は日常の一部だったそうですね。
はい。家にはバズ・ライトイヤーのおもちゃがあって、アンディやボニーのように、バズと一緒に世界を救うごっこ遊びをして弟とよく遊んでいました。お弁当の巾着やランチョンマットも、親が「トイ・ストーリー」シリーズで揃えてくれて……。一つだけ思い出を挙げるのが難しいくらい、常に私のそばにあった作品なんです。
アフレコで発見した、おもちゃならではのテンポ感

――そんな思い入れの深い作品で、今回実際にアフレコを体験してみて、新たに気づいたことや発見はありましたか?
おもちゃには「おもちゃならではのテンポ感」があるんだということに、初めて気づきました。人間だったら、相手の言葉を受けてから一拍置いて考えてセリフを言うような場面でも、おもちゃたちは独特のテンポで掛け合いをしているんです。その「間(ま)」のなさが、おもちゃとしての生き生きとした躍動感を生んでいるんだなと、声を当てながら強く感じました。
――それは非常に興味深い視点ですね。
特に私が演じたスナッピーは、ウッディやバズに比べると、生まれてからの年数が短いキャラクターなんです。だからこそ、子供らしいピュアな一面を持っていて、相手の言葉を何も疑わずに全て信じて言葉を発している。そういう「純粋ゆえの迷いのなさ」が、スナッピーらしさであり、おもちゃらしさなんだなとアフレコを通して学ぶことができました。
――「スナッピー」をどのようなキャラクターだと捉えていますか?
三本脚で立つデジカメのおもちゃで、本当に真っすぐで素直なんです。子供のような純粋さがありつつ、おもちゃならではのコミカルな可愛らしさも持っていて、演じながら「なんて愛おしいキャラクターなんだろう」と何度も思いました。きっと観てくださる方にも、その仲間想いで優しい魅力を好きになっていただけると思います。
――アフレコでは、非常にユニークな方法で役作りをされたと伺いました。
収録中はスナッピーになりきるために、私も「三本の脚で立つぞ」という意識を持っていました(笑)。ずっと手を横に置いて、心の中で「私はスナッピーだ、私はスナッピーだ」と唱えながら声を吹き込んでいたんです。そうしたら吹替監督が、「今のはスナッピーになりきっていたからこそ出た声だった。すごく良かったよ」と言ってくださって。その言葉が本当に嬉しかったです。
――スナッピーになりきっていたからこそ出た声とは、どんなシーンだったのでしょうか。
劇中、スナッピーたちがボニーを救うために冒険に出る中で、転んでしまうシーンがあるんです。最初は「可愛らしい声を出そう」と準備していたのですが、実際に出たのは自分でも驚くような、ちょっと「うっ」というリアルな声で(笑)。でも、それが逆に必死に頑張っている感じが出ていたみたいで、吹替監督も「今のままで行こう!」と。台本に書かれていない、力を入れる時の声や息遣いの中にこそ、スナッピーだから出た声が多くあったなと思います。
――今回の経験でご自身に変化はありましたか?
乃木坂46に加入してからは、自分の声を客観的に聞く機会や、評価の対象になることが増えて、自分の歌声も含めて声と向き合う時期が長くありました。でも、小さい頃からアニメーション作品に触れてきた影響か、「喋り方がアニメっぽいね」と言われることが多くて。今回の役では、その自分の特性を「別物に変える」のではなく、持っているものを「1から100に増幅させる」作業ができた気がします。US本社のスタッフさんからも「明るくエネルギッシュな声だ」と評価していただけて、自分の声に自信を持てるようになりました。
あの時期にしか育めなかった感性が、今の私を作ってくれている
――「仲間」というキーワードも今作の大きなテーマです。乃木坂46というグループの中で活動する井上さんは、普段どのような意識で仲間と接していますか?
グループの中で特定の役職があるわけではないので、立ち位置を言葉にするのは難しいのですが、常に意識しているのは「先輩も後輩も、みんなと同じ目線で景色を見たい」ということです。加入時期は違っても、同じステージに立つ仲間として、嬉しい景色や感情を分かち合いたい。私は後輩に対して「先輩風」を吹かせたくないですし、大好きな先輩方に対しても、敬意を持ちつつフレンドリーに接してもらえるような後輩でありたいと思っています。
――現代はデジタルが普及し、ボニーのように画面に夢中になる子供たちも多いです。この作品のメッセージをどう受け止めましたか?
デジタルは確かに便利で、世の中はどんどん変わっていきます。でも、今作を観て「変わること以上に、変わらないでいることの方が難しいし、尊いんだ」と強く感じました。自分たちがかつて遊んでいたおもちゃへの感謝や、時が流れても変わらない絆の温かさを、大人も子供も感じられる作品だと思います。
――最後に、当時のバズのおもちゃで遊んでいた自分に声をかけるとしたら、何と声をかけたいですか?
「その時間を、もっと大切にしてほしい」と伝えたいです。今はスマートフォンなどのデジタルデバイスなしでは生きていけない時代ですが、私が子供の頃におもちゃだけで楽しんでいたあの時期にしか育めなかった感性が、今の私を作ってくれていると思います。当時の「楽しい!」「嬉しい!」という純粋な気持ちを大切にしてね、と言ってあげたいです。
(おわり)
■スタイリング:鬼束香奈子
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■ヘアメイク:森柳伊知










