エンタメ・インタビュー

香取慎吾×赤楚衛二、東野圭吾「虚ろな十字架」で共演 樹海シーンの裏側「無言で応じ合う瞬間が楽しかった」

香取慎吾×赤楚衛二
(更新日: )

 香取慎吾と赤楚衛二が、連続ドラマW 東野圭吾「虚ろな十字架」(瀬々敬久監督、WOWOWにて、毎週(日)午後10時より放送・配信中 WOWOWオンデマンドで第1話~配信中)に出演。香取は11年前に起こった人生を揺るがす“ある事件”により被害者遺族となった主人公・中原道正を、赤楚は小児科医として人望を集めながらも、背後に凄惨な秘密を抱えた加害者家族のキーパーソン・仁科史也を演じる。東野圭吾氏による渾身の社会派ミステリーが、名匠・瀬々敬久監督の手によって満を持して初映像化。極限の葛藤を抱えたキャラクターとして魂をぶつけ合った二人に、撮影中のエピソードや香取の座長ぶり、撮影終了後も役がなかなか抜けなかったという赤楚の様子、そして過酷な撮影を乗り切るために不可欠だったものについて話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)

 

薄っぺらい気持ちでは絶対にできない

【第1話 期間限定公開】連続ドラマW 東野圭吾「虚ろな十字架」

 ――本作は「死刑制度の本質」という非常にデリケートで重厚なテーマに正面から切り込んでいます。最初に脚本を読まれた際、どのように感じられましたか?

 香取慎吾  自分の役を追っていくなかで、赤楚くん演じる史也だったり、色々なキャラクターがどう絡んでくるんだろうと、脚本を読んでいる最中からミステリーとしての面白さを感じていました。ただ、いざ撮影が始まると、僕自身が演じる中原という男の苦しみがいっぱいで……本当に重いテーマですから。もちろんドラマではあるんですが、現実の社会において、この重みのなかで実際に生きている方がたくさんいる。そう思うと、薄っぺらい気持ちでは絶対にできない、自分の心の奥底までその痛みを噛みしめて向き合わなければいけない作品だと強く感じていました。

 赤楚衛二 本当にしんどい展開が続きます。精神的に苦しいストーリーではあるのですが、だからこそ死刑制度や、犯してしまった罪との向き合い方について深く考えずにはいられませんでした。何よりミステリーとして、読み物としてものすごく面白いんです。「とてもつらいストーリーだけど、先が気になる」というような、抗えない求心力がある本だなという印象を受けました。

 ――劇中で描かれる、現実の司法のシステムや家族の壊れ方にも驚きが多かったのではないでしょうか。

 香取慎吾  知らないことだらけでした。特に裁判のシーンで驚いたのが、被告人との物理的な距離の近さです。リアルな法廷もそうらしいのですが、本当に棒の柵が1個あるだけで、乗り越えて掴みかかれるくらいの距離に犯人がいるんです。ちょうど撮影している最中に、実際のニュースで「傍聴席から被告人に飛び込んだ」という報道があって、本当に偶然なんですけれど、そのリアリティにゾッとしました。事件が起きた後、遺族が警察で話さなきゃいけないことの多さや、それよりも「早く家族に会いたいんだ」という思いが通じないもどかしさ。そうしたエンターテインメントの枠を超えて、私たちが知るべき現実が丁寧に描かれています。

 赤楚衛二 僕自身も、これまではニュースを見ても「かわいそう」という一言で終わっていた部分が、この作品を通じて「やってしまった側、加害者側の家族のこと」まで深く考えるようになりました。

 香取慎吾 被害者というカテゴリーも、決して一括りにはできないんです。僕が演じた中原と、妻の小夜子(鈴木杏)との間にすれ違いが生まれていく過程が本当に怖くて……。ただ「被害者は被害者」というわけではなく、その家族の中でも意見が割れて、結果として家族関係が壊れていってしまう。演じながら、あのセリフを言い合うシーンは本当に辛かったです。家で二人きりで話すシーンなんかは……。これがリアルなんだと思えば思うほど、胸が締め付けられました。

 

言葉なき対話の真骨頂

香取慎吾

 ――お二人が対峙するシーンはどれも息をのむ緊張感があります。予告映像で印象的に登場する「樹海」でのシーンはいかがでしたか?

 香取慎吾 あの樹海のシーンは、ちょうど赤楚くんのクランクアップの日だったんですよね。お互いの役としての感情が極限まで高まる、まさに真骨頂と呼べるシーンでした。樹海という過酷な場所での芝居は苦労も絶えませんでしたが、役者同士が言葉を多く交わさなくても、「どっちに動きますか」「こう行きますか」とお互いの出方が通じ合う瞬間は、本当に気持ちが良かったです。

 赤楚衛二 僕の最終日ということもありましたが、今作は物語の時系列に合わせて撮影していく「順撮り」に近い形で撮らせていただいたので、感情のグラデーションがすごく作りやすかったです。あれが順番バラバラだったら、精神的に相当きつかったと思います。

 香取慎吾 本当にスケジュールを工夫してくれる、リアルな感情を大切にしてくれる監督です。

 ――撮影でハプニングはありましたか。

 赤楚衛二 劇中で僕たちが倒れ込むカットがあるんですが、その前に香取さんが転ぶという設定があったんです。

 香取慎吾 転ぶこと自体は台本通りだったんだけど、あの樹海って、岩に苔がびっしりついていて。しかも撮影の前日が雨だったから、地面が濡れていたんです。見た目は柔らかそうに美しく見えるんだけど、その下はカチカチの岩。転んだ瞬間、「あ、これどっかをめちゃくちゃ打ったな」っていう凄まじい衝撃がありました(笑)。でもギリギリセーフな感じでそのまま芝居を続けました。幸い次の日には影響がなかったんですけど、あの瞬間は「ケガしたかもな」と思いました。

 赤楚衛二 あの場所は本当に凄かったですね。行く前は「樹海」と聞いて、少し不気味なイメージを持っていたのですが、実際に入ってみると本当に美しくて。まるでスタジオジブリの『もののけ姫』の世界に入り込んだかのような、神秘的で気持ちの良い空気が流れていました。

 香取慎吾 本当に神秘的。樹海にも色々種類があるらしくて、僕らがイメージするような荒れ果てた場所もあるそうなんですが、僕たちが撮った場所は本当に空気が澄んでいて。そんな静寂の中に、監督の「そこもうちょっとこうしてください!」という声が森の中に響き渡る。あの響きの中で、二人が無言で応じ合う瞬間が、お芝居をやっていて本当に楽しい瞬間でした。

 ――第3話(9月20日放送・配信)では、被害者遺族の会で、中原と史也が初めて対面することになります。

 赤楚衛二 あのシーンは今でも深く印象に残っています。史也としては、遺族の方々の前に立つ恐怖と、「逃げないけれど、今すぐこの場から逃げ出したい」という引き裂かれるような葛藤があって。遺族と初めて対峙してしまった瞬間のヒリつくようなお芝居は、やっていても非常に特別でした。「もし自分がこの史也の立場だったら、どうやって謝るだろう」という気持ちだけを持って臨みました。謝罪の気持ちが自然とあふれ出ましたね。

 香取慎吾 赤楚くんのその姿を目の当たりにして、本当に心が揺さぶられました。ただ、僕が同時に強烈な印象として覚えているのが、あのロケ地が「ゴミ処理場」だったということです。合間に、ものすごくでっかいクレーンがゴミを豪快に掴んで動かしているのを見ていて、何とも言えない気持ちになったんです。人の命や罪、そういう重いテーマを扱っている作品に、あまりにもぴったりな、虚無感の漂う場所で。あの何とも言えない嫌な空気感、ぜひ注目してほしいです。

 

香取自ら差し入れをお店で購入!?

赤楚衛二

 ――中原と史也という役柄の関係性もあり、撮影現場ではあえてコミュニケーションを控えていたとお聞きしました。その緊迫感の中で、赤楚さんから見た座長・香取さんの佇まいはいかがでしたか?

 赤楚衛二 香取さんは、すべてを受け止めてくれるんです。その器の大きさが、僕にとってすごく救いでした。これまで色々な現場を経験してきましたが、今までには感じたことのないような、言葉を超えた「懐の深さ」がある。この感覚の中でお芝居をさせていただけたのは本当に光栄でしたし、妻役の蓮佛(美沙子)さんとも「香取さんの懐の深さはすごいね」と現場でよく話していました。

 香取慎吾 そんな風に言ってもらえるのは照れくさいですね(笑)。僕自身は「座長として引っ張ろう」という意識は全然なくて。昔から、現場の長はあくまで「監督」だと思っているんです。だから、自分が引っ張るというよりも、瀬々監督の熱い思いに必死についていこうという感覚でした。……あ、でも差し入れをするのは大好きですよ!

 赤楚衛二  香取さんからいただいたお弁当、本当に美味しかったです! 福岡のお弁当とお聞きしたのですが、見たこともないような贅沢なもので、どうやって手に入れられたのかびっくりしました。

 香取慎吾 あはは、喜んでもらえてよかった! 僕はみんなが「そろそろ疲れてきているな」というタイミングを見計らって、お店にお菓子やスイーツを買いに行ったりするのも好きなんです。

 ――香取さんご自身が買いに行かれるんですか?

 香取慎吾 自分で買いに行きますよ。

 ――香取さんがお店で大量のスイーツを買っていたら、店員さんも驚きますよね?

 香取慎吾 「あっ!」っていう顔はされますね(笑)。でも、デザートを持って現場に戻ると、みんながパッと笑顔になって「甘いものが欲しかったんだ!」と盛り上がってくれる。あの瞬間がすごく嬉しいんです。

 ――そうした過酷な撮影の中で、お2人の支えになっていたアイテムはありますか?

 香取慎吾 アイテムではないのですが、瀬々監督の声です。テストで重いシーンを撮っていて、監督が本番だと勘違いして「オッケー」という声が現場に響き渡って。みんなが「まだ本番じゃないよ」ってニヤっとなる瞬間で、とても癒やされました。

 赤楚衛二 ありましたね(笑)。僕は空気清浄機です。やっぱりこういう役を演じていると、家の中も少し重い空気に感じるのですが、その空気を吸ってくれたような気がしました。購入してよかったです(笑)。

 

役の十字架を下ろすとき――それぞれの「スイッチ」と「決断の指針」

連続ドラマW 東野圭吾「虚ろな十字架」©WOWOW

 ――精神的にも深く没頭された撮影だったと思いますが、クランクアップした後、すぐに役から抜けることはできましたか?

 赤楚衛二 僕は今回、本当に抜けなくて苦労しました。この役に入る直前が比較的明るい、コメディ寄りの作品をやらせていただいていたので、今回は本当に「ずっぷり泥沼に浸かるような気持ち」で挑んだんです。そうしたら、撮影が終わっても元の日常での喋り方や、他のキャストの方々との距離感が分からなくなってしまって……。最初の2〜3週間くらいは中原たちとの対峙を引きずってしまい、かなり戸惑いました。

 香取慎吾  今日こうやって赤楚くんと笑ってたくさん話せたから、これで完全に解消されたんじゃない?(笑)

 赤楚衛二 本当にそうですね、今日で完全に抜けそうです(笑)。香取さんはスッと抜けられるタイプですか?

 香取慎吾 僕は分かりやすいビジュアルの「スイッチ」があるから、抜けやすいかもしれないです。今回の中原役の髪型から、別の役や私生活に戻るためにヘアチェンジをすると、そこで脳がパチッと切り替わる感覚があります。近々また髪を真っ黒に短くカットしてしまう予定なので、髪色が変わるのと同時に、役をスッと下ろせる気がしています。

 ――劇中では、登場人物たちが人生の大きな「決断」を迫られます。お二人が実生活において、迷った時に指針にしている言葉や、マイルールはありますか?

 赤楚衛二 僕は内容にもよるのですが、基本的にはあまり迷わず、直感を信じてポンと進むタイプです。どうしても迷って決められない時は、「どちらがよりワクワクするか」「惹かれるか」「自分の心が動くか」を基準に選ぶようにしています。今回の史也役を演じる上でも、現場にあらかじめ作った答えは持っていきませんでした。相手のお芝居を受けて、その瞬間に直感で動こうと。ただ、答えを出さない代わりに、日常生活でもずっと「自分ならどうする?」という問いを自分自身に投げかけ続けていたので、それは本当にきつい日々でした。

 香取慎吾 僕も赤楚くんとすごく似ていて、仕事でも私生活でもあまり迷わないです。ただ、「迷ったふり」をすることはあります(笑)。迷っているように見せて、実は心の中では最初の瞬間に「こっちだ」と進むべき道が決まっている。そして、その最初の直感に従って進んで、後悔したことや間違っていたことは、これまでの人生で一度もない気がしています。だから、今回の中原という難しい役を演じる上でも、迷うことは一切ありませんでした。瀬々監督を100%信頼して、その背中にただ必死についていくだけでしたから。

(おわり)

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