俳優・映画監督の斎藤工が発案し、劇場体験を届ける移動映画館「cinema bird(シネマバード)」(cinemaの「e」はアキュート・アクセント付)が、10月18日京都府京都市右京区の旧京北第一小学校体育館で『cinema bird in 京都・京北』を開催した。2014年に始動したcinema birdは、今回で16回目の開催となる。
■文化庁長官表彰受賞の地・京都へ。廃校の体育館が1日限りの映画館に変身
cinema birdは、2014年に宮城県石巻市で初開催して以来、福島や熊本、北海道、石川などの被災地を中心に、お寺や体育館といったさまざまな場所を1日だけ映画館に変え、映画や音楽、お笑いを通じて「同じ空間で感動を共有する」劇場体験を届けてきた。2024年には、長年にわたり被災地や映画館のない地域へ文化芸術を届け、地域に根ざした活動を続けてきた功績が評価され、令和6年度文化庁長官表彰を団体受賞。その表彰式が行われた京都の地で、16回目となるcinema birdの開催が実現した。
舞台となった京都市右京区北部に位置する京北地域は、京都市中心部から車で約1時間、豊かな森林と清らかな水に恵まれた自然あふれるまちである一方、地域内に常設の映画館はなく、映画鑑賞には京都市中心部まで足を運ぶ必要があった。そんな京北地域で今回、映画館へと姿を変えたのは、かつて子どもたちの学びや成長を見守ってきた旧京北第一小学校の体育館だ。
いつもの体育館に大きなスクリーンが設けられ、映画、音楽、そしてお笑いを一度に楽しめる、この日だけの特別な劇場空間が誕生。映画を観るだけではなく、隣に座る誰かと笑い、驚き、同じ瞬間に心を動かされること――そんなかけがえのない体験が、いつかこのまちで思い出される大切な記憶となることを願い、地域の子供たちや住民を迎えてイベントが実施された。
オープニングには、斎藤工、古賀小由実、スペシャルゲストの永尾柚乃、そして自身も京都出身でMCを務める谷尻萌が登壇した。

開催にあたり、発起人の斎藤工は「cinema bird は今年2026年で12年目、これまでに16回、地域と地域、人と人を繋いでいく、その中心にこのcinema birdがあるというような旅をしています。2年前には文化庁長官表彰というすごく立派な賞をcinema birdが団体受賞させていただき、そのご縁で、京都市さんにこの京北という場所でcinema birdを開催しませんかとお声がけをいただき、実現しました。本日は楽しい時間を過ごしてください。」と語った。
また、世界を変える30歳未満の30人を選出し、未来の若い才能に光を当てるアワード「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2026」で、9歳にして同アワード史上最年少受賞を果たした俳優・映画監督・脚本家の永尾柚乃は「実は私、お餅が大好きなんですね。京北は納豆餅が有名ということで、さっき納豆餅を食べたんですけど、とても美味しかったんです!きなこの甘みに納豆のしょっぱさがちょうどいい感じで、買って帰ろうかなと思っています。今日はよろしくお願いします!」と食レポとともに笑顔で挨拶した。
さらに、学校の思い出にまつわるトークでは、今月2026年10月15日に10歳の誕生日を迎えたばかりの永尾柚乃が、「算数、国語、理科、図工、体育、社会全部好き。好きじゃないものはないです!」と回答。斎藤工から、永尾が小学2年生の頃に世界中の猿の生態を調べたという自由研究について紹介されると、永尾は「3年生の頃はお団子とお餅の歴史を、今年はサメを研究しました!」と尽きることのない好奇心を見せた。
そんな永尾に対し、齊藤が「でも実年齢はもっとだいぶ上だと思ってるんで。」と切り出すと、永尾が「何歳ぐらいだと思います?」と質問。齊藤が「72歳。いつも勉強させていただいています。」と10歳とは思えない知識と経験を感じさせる受け答えを絶賛すると、永尾も「いやいや、こちらこそです。」と謙遜し、息の合った掛け合いを見せた。
一方、齊藤は体育館で遊んだ幼少期の思い出を振り返りながら、会場に旧京北第一小学校の卒業生がいることを知ると、「子どもたちがワイワイしていた当時の景色を知っている皆さんが、改めてこういったイベントでこの場所に集まることもなかなかないと思うので、今日は童心にかえって、楽しい時間を過ごしてください。」と呼びかけ、会場をあたたかな空気で包み込んだ。
■常連の永野が笑いを届ける!斎藤工・古賀小由実・birdが音楽でつなぐ特別な時間
cinema birdの魅力の一つが、映画上映に加えアーティストライブやお笑いライブが行われる点だ。
開場とともに、斎藤工と古賀小由実による音楽ユニット「cinema birds」がウェルカムソングを披露。ギターとピアノの音色に、齊藤の甘い歌声と古賀の透き通る歌声が重なり合い、会場が優しい音色に包まれる中、京都・京北での特別な一律が幕を開けた。

お笑いライブには、cinema bird常連メンバーの永野が登場。「きたああああああああ!」と絶叫しながらステージに現れると、「ただただネタを披露します!」という宣言通り、息つく間もなくネタを次々と披露。さらに、永野の呼び込みでスペシャルゲストの永尾柚乃が急遽参戦するも、「でも、黙っててください!」「僕が主役なんで!」と永尾を脇役にネタを披露する一幕もあった。自由奔放なステージに永尾も「面白かったです!」と太鼓判を押した。代表ネタ「ラッセン」では会場の子どもたちとのコラボレーションも実現し、「ラッセンが好きより普通に京北が好き〜!」とご当地バージョンも披露され、会場は大きな手拍子に包まれた。

続いて、古賀小由実が「永野さんのステージの熱を、音楽でクールダウンしましょう。」と、『My Favorite Things』や『命の名前』といった名作映画を彩る楽曲をカバー。最後にはオリジナル楽曲『ヒカリ』を歌い上げた。産休・育休を経て久しぶりの参加となった古賀は、「cinema bird はブランクがあってもほっとする場所ですね。本当にありがたいです。ちょっとしたことで泣きそうになる。拍手だけで涙腺が。」と復帰の喜びを語った。
さらにスペシャルライブには、京都出身のシンガーソングライター・birdが登場。齊藤にとってbirdとの共演はプロジェクト始動当初からの念願であり、「12年前に飛び始めたこのプロジェクトのひとつの目標として、bird さんにご一緒していただけたらという野望がずっとあったんですけど、bird さんの地元が京都ということで、この上ないタイミングでご一緒していただけることになりました。」と喜びを語った。

ステージに登場したbirdは、「今日はものすごく気持ちの良い秋のお天気ですね。とても嬉しいです。ぜひ皆さんと一緒に楽しい時間を過ごせたら。」と挨拶。ギタリストの樋口直彦とともに、故郷・京都の地でスペシャルライブを届けた。
■『アメリと雨の物語』『映画の妖精 フィルとムー』の2作品を上映
今回上映されたのは、1960年代の神戸を舞台にベルギー人の女の子・アメリの成長を描いた長編アニメーション映画『アメリと雨の物語』(日本語吹替版)と、斎藤工が企画・原案・脚本・声の出演を担当した短編クレイアニメーション『映画の妖精 フィルとムー』の2作品だ。
上映前の登壇で齊藤は、『アメリと雨の物語』を選んだ理由について「今回のcinema birdでは何を上映しようかと、この京北という場所を想像しながら考えていたときに、1本のフランスのアニメーション映画に試写で出会い、とても感銘を受けたんです。ベルギーの少女が関西で成長していく物語なんですけど、その日本語吹替版のアメリ役が柚乃さんだったんですね。すごく運命的に。柚乃さんが来てくれるからこの作品にしたというよりは、この京北という場所で上映するにふさわしい作品が、たまたま柚乃さんの出演作だったんです。偶然だけど偶然じゃないなって、今日感じております。」と運命的な出会いを明かした。
映画館のない京北地域で、誰かと一緒に同じスクリーンを見つめ、感動を分かち合う特別な時間となった。
■斎藤工「この場所の意味が、またここから始まっていくきっかけになれば」
イベントの最後には出演者たちが再びステージに集結。
永野は「今日も楽しませていただきました。ありがとうございました。」と感謝を伝え、MCの谷尻萌は過去に京北で家族とバーベキューを楽しんだ思い出を振り返った。古賀小由民は「いつもいろいろなエンタテインメントをごちゃまぜにした cinema bird。笑ったり、泣いたり、感動したり、いろいろな気持ちをまたお家に持ち帰ってください。」とメッセージを送り、初参加となったbirdは「京都でライブをするのはすごく久しぶりだったので、私も樋口さんもすごく楽しかったですし、皆さんの手拍子にすごいグルーブがあって、それに乗せて演奏を楽しむこともできました。」と振り返った。
永尾柚乃は「皆さんのお歌とか、永野さんと皆さんと一緒にラッセンを踊ったりとか、すごく嬉しかったです。本当に楽ワクドキ(楽しい、ワクワク、ドキドキ)でしたね!」と笑顔で語り、最後に斎藤工が以下のように締めくくった。
「長い1日、皆さんのおかげで素敵なイベントになりました。僕たちも毎回いろいろな場所に連れていってもらって、ここ京北で、この作品と、この素敵なメンバーの皆さんと、そして素敵な皆さんに出会えて本当に幸せです。この体育館は2020年に閉校された場所で、かつてはいろいろな子どもたちが集まる場所だった。そんな場所で初めて cinema bird を開催させていただいて、ここの場所の意味が、またここから始まっていくような、そんなきっかけになっていたらいいなと思います。今日皆さんが感じたことを持ち帰っていただいて、また大事な人に届けていただけたらなと思います。」

イベント終了後は、出演者が来場者一人ひとりをハイタッチで見送り、温かな交流の中で幕を閉じた。かつて子どもたちの声が響いていた小学校の体育館に、新たな笑い声と音楽、映画を通じた感動が生まれた1日となった。cinema birdは今後も人と人、地域と文化をつなぐ活動を全国へ届けていく。
