俳優の奥平大兼が、NHK「夜ドラ」枠で放送される『税金で買った本』(8月24日スタート/毎週月~木曜夜10時45分〜11時00分)に出演。10年ぶりに図書館を訪れたヤンキー高校生・石平紀一(いしだいら きいち)を演じる。本作はずいの氏(原作)と系山冏氏(作画)による人気漫画の実写化であり、奥平にとって連続ドラマ初主演作。主人公・石平紀一がひょんなことからアルバイトを始め、知られざる図書館の裏側や「知る喜び」に触れていく物語。今回は、主演を務める奥平に、役作りへのこだわりから撮影現場でのエピソード、そして図書館のルールまで話を聞いた。(取材・撮影=村上順一)
真っ直ぐな好奇心が石平紀一の本質

――本作のオファーを受けた時の率直な心境をお聞かせください。
去年の夜ドラ『いつか、無重力の宙で』に引き続き、今年もこの枠に参加させていただけることを光栄に思います。お話をいただいてから原作を拝読したのですが、図書館という静かな空間の中に、驚くほど個性豊かで魅力的なキャラクターたちが息づいていることに驚きました。これまで僕が携わってきた作品は、どちらかというとシリアスなものが多く、今回のような「ライブラリー・ヒューマンコメディー」という明るいテイストの作品は新鮮でした。だからこそ、「自分にこういう役が務まるのかな」という不安も少しありましたが、それ以上に新しい挑戦への楽しみな気持ちが勝っていました。
――今回演じられる石平紀一は、金髪のヤンキー高校生という、これまでの奥平さんのイメージを覆すような役どころです。役作りにおいて意識したことはありますか?
紀一はケンカが強くて、見た目もヤンキーそのものです。でも、実際に演じてみて感じたのは、彼は「好奇心がものすごく強くて、自由で純粋な子」だということです。気になることがあったら、答えを知るまでとことん調べないと気が済まない。その真っ直ぐな好奇心こそが彼の本質だと思い、そこを一番大切に演じています。
――ビジュアル面でも、金髪にされるなど気合が入っていますね。
過去に映画『ヴィレッジ』や『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』で金髪の役をやったことがあったので、懐かしい感覚もありました。今回の紀一に関しては、原作の髪型よりも少し現代的なニュアンスを入れたいと相談しました。原作ではもっと短髪なのですが、ドラマ版では「今っぽさ」や、僕自身が紀一だったらどうするかという解釈を加えて今の形に落ち着きました。
――言葉遣いや台詞回しについても、現場で提案されることがあったとか。
そうなんです。現場の皆さんと相談して、台本に書かれている言葉を、より今の若者が使うようなリアルな表現に変えさせてもらうことがありました。若者って、言葉をすぐに略したがるじゃないですか(笑)。あまりに略しすぎて、現場のスタッフの方に、「これってどういう意味?」と聞かれてしまうこともありました。でも、そういったアドリブや表現の変化を許容してくれる、とても懐の深い現場でした。
みんなにも知ってほしい図書館の大切なマナー

――舞台となる図書館での撮影についても伺いたいのですが、実際に現場に入ってみて発見したことはありますか?
たくさんあります。まず驚いたのが、「本を棚から取り出す時、背表紙の一番上の部分を引っ掛けて取り出してはいけない」というルールです。あそこを持つと、背表紙が傷んでページが剥がれてしまう原因になるそうなんです。それを知ってからは、もう罪悪感がすごくて。プライベートで本を手にする時も、絶対にそこを持てなくなりました。これは視聴者の皆さんにもぜひ知ってほしい、図書館の大切なマナーです。
――それは意外とやってしまいがちな行為ですよね。劇中では本を棚に戻す「配架」のシーンも多いと思いますが、苦労された点はありますか?
本って、一冊一冊は軽くても、まとまるとかなりの重量になるんです。紀一は主にその配架を担当しているのですが、棚に隙間がないところに新しい本を入れようとして、下の段から全部ずらさなきゃいけない作業は本当に大変でした。この撮影期間で、自分の人生の2〜3年分くらいの量の本に触れたんじゃないかと思うほどです(笑)。
――他にも「お仕事」としての驚きはありましたか?
日本十進分類法(NDC)という、本をジャンルごとに数字で分けるルールがあることも、この作品を通じて初めて意識しました。ほぼ全国共通の番号で、何番を見れば自分の探している分野の本があるか分かる。当たり前のように利用していた図書館の、合理的なシステムに感動しました。あとは、その土地の歴史や地形を記録した「郷土資料(地域資料)」の存在も面白いなと思いました。自分の住んでいる街の過去を知ることができる場所だと、改めて図書館の奥行きを感じました。
――撮影は実際の図書館で行われているそうですね。
はい。複数の図書館の場所をお借りして撮影しました。面白いのは、「カウンター周りはこの図書館」「バックヤードはこの図書館」というように、組み合わせて一つの架空の図書館を作り上げている点です。ドラマオリジナルの本も登場するのですが、美術スタッフさんのクオリティが本当に素晴らしくて、映像で見ると既存の書籍と全く違和感がないんです。これは隠れた見どころです。また、図書館によって所蔵している本のカラーが違うのも興味深かったです。美術系の本が充実している館があったり、蔵書数がとんでもなかったり。待ち時間には、思わず書棚を物色してしまいました。
美術系の本を見つけるとつい手が伸びてしまった

――共演者の方々とのエピソードも教えてください。一般図書係の非正規職員・早瀬丸小夜香役の西野七瀬さん、マッチョな非正規職員・白井里雪役の青木マッチョさんとはどのような雰囲気ですか?
お二人とも、良い意味ですごく静かで穏やかな方なんです。最初は僕だけ少し年齢が離れているのでどう接しようか迷ったのですが、共通の知り合いの監督さんの話をして、だんだんと打ち解けていきました。現場ではスタッフさんが用意してくださった「ぬりえ」が大流行していて、休憩時間はみんなで塗り絵に没頭していました。あんなに静かな現場は初めてかもしれません(笑)。また、青木マッチョさんには筋トレのアドバイスをいただいたりもしていました。
――お気に入りのキャラクターはいますか。
個人的には大友花恋さんが演じる正規職員の茉莉野美波というキャラクターが好きです。非正規を軽んじて周囲に嫌われているのですが、彼女の奔放さに周囲が振り回されるエピソードでは、普段はバラバラな職員たちが、そこだけは結託して茉莉野に立ち向かう姿に、このチームの絆を感じられて面白いなと思いました。
――さて、奥平さんご自身は、もともと本を読まれる習慣はありましたか?
学生時代は試験勉強のために図書館を利用することが多かったのですが、本を借りるという習慣はあまりありませんでした。でも、美術系の図鑑や絵画の本は好きで、家にも何冊か置いてあります。今回の撮影中も、美術系の本を見つけるとつい手が伸びてしまいました。小説だと原田マハさんの作品が好きで、特にゴッホとその弟テオを描いた『たゆたえども沈まず』は、僕が初めて“作家買い”をした思い出深い一冊です。
――最後に、放送を楽しみにしている視聴者の方々へメッセージをお願いします。
図書館という場所は、単に本を借りる場所ではなく、「人生を豊かにしてくれる場所」だと、この作品を通じて強く感じました。自分が知らなかった世界への扉がそこら中にあります。このドラマが、普段あまり図書館に行かない方にとっても、新しい発見のきっかけになれば嬉しいです。ドラマではふとした瞬間にハッとさせられる言葉や、心が温まるエピソードが毎話詰まっています。紀一の成長と共に、本が持つ力や図書館の奥深さを、ぜひ最後まで楽しんでください。
(おわり)



















