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板野友美「自分のなかにないと嘘っぽくなる」芝居の心構え、経験は説得力に

板野友美
(更新日: )

 板野友美が出演した、映画『プリズン13』が12月4日にDVD発売、11月2日に先行レンタルが開始される。同作は、“スタンフォード監獄実験”に基づき、看守と囚人に分かれた12の男女が監獄で7日間過ごす実験を通して人間の本性を描いた。板野は、監獄実験に参加する主人公・マリ(堀田真由)の姉・ユマを演じた。自分にはない男勝りな性格のユマを演じるのは難しかったという板野。その役作りの一助となったのは妹・板野成美の存在。妹・マリとの関係性を実妹に重ねることで強い思いのもとで演じられたという。挑戦だったとも語る本作、彼女はどう向き合ったのか。【取材・撮影=木村武雄】

自分になかった「役」

――出演が決まった当時の心境を教えてください。

 私が演じたユマは監獄実験に参加していないので、どこか客観的な感じではありました。ですが、台本を読み進めていくとその内容がハードで、「これはどうやって撮るんだろう」や「撮るにしてもどこまで撮るんだろう」と全然想像がつかなかったです。それに対して、私たちユマと夫コウキ(前野朋哉)のシーンはホッコリしているので、よい緩和剤になったらいいなと思いました。

――ユマという役柄に対してはどうですか?

 自分としては演じるのがすごく難しかったです。ユマは格闘技のライターで、旦那に対しては強く、男勝りな性格もあって。でも私は身長が高いわけでもなければ、男らしさもないので、どのように演じたらいいのだろうと考えました。役作りのために、格闘技に触れたりもして。マリを相手にボクシングのミット打ちをするシーンがあるのですが、体の線が細くてやわだと「本当にやっているの?」と観ている人が疑問に感じてしまうので、ボクシングの指導を受けて動きを学び、衣装を大きめのサイズにして体格を大きく見せたりと出来るだけ役に近づけました。

――撮影自体はいつ頃だったんですか?

 5月の終わり頃でした。

――では、6月1日にマイナビBLITZ赤坂で開催したワンマンライブ『板野友美 LIVE 2019』の前だったんですね。ライブに向けてダンスレッスンや体力づくりをされていたから、ちょうどよいタイミングでしたね。

 体は良い感じに仕上がっていました(笑)。

――格闘技はもともと観られていたんですか?

 実はこの作品への出演が決まる前に、ボクシングの世界大会が特集される番組にゲストで出演させて頂きました。それまでは触れる機会はなかったのですが、それを観て「ボクシングの迫力に圧倒されてかっこいいな」と思ってそこから興味を持つようになりました。そういう出来事があった後に、この作品の話が来たのでご縁を感じました。

――板野さんはそういう縁ごとが多いですよね。

 そうなんですよ! この前もヨガウェアの撮影をしたのですが、そこでもボクシングをする場面があって。びっくりしましたね!

――そのボクシングもさまになっていましたね。それと輪ゴムを飛ばすシーン。あれはなかなかの腕前でした(笑)。

 すごく練習しました(笑)。うまく飛ばせなくて、親指に当たってしまうんですよ。なので、そのやり方も伝授してもらって、2週間ぐらい練習しました。本編最初にある、マリと姉妹喧嘩をするシーンで、クマのぬいぐるみに輪ゴムを当てるのですが、練習では当たらなかったのに本番ではうまくいって。何事もなく演じていましたが、内心はもう嬉しくて。マリとも「すごいね!」って。

――さすが本番に強いですね。前野さんに当てるシーンもなかなかです(笑)。

 前野さんも「遠慮なくどんどん当てて」と言ってくださったので、遠慮なく当てさせて頂きました! たぶん痛かったと思います(笑)。

板野友美
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役に活かされた、妹の存在

――板野さんは映画やドラマなどへの出演が続いています。この作品から得られたものはありましたか?

 私がクランクインしたときは監獄実験のクライマックスを撮っていたので、現場でそのシーンを少し見させていただきました。舞台のような迫力と、監獄という現場も殺伐としていて非日常的な空間でした。私自身はそういう殺伐とした役どころは演じたことがなかったですし、ホラー以外ではそういう暗い作品もなかったので、本当に圧倒されました。そのなかで私は、妹マリへの思いや、旦那への優しさ、愛情が垣間見られたらいいなと思って演じました。私の役どころとしては、こんなに男らしい役というのもこれまでなかったので、演じるのは難しかったですがその分、勉強になりました。難しいなかにも吸収することがたくさんあった作品でした。

――役に対する難しさもあったけど、自分の経験が生かされている部分もあるんですね。

 私の妹(板野成美)もマリと似ていて、私の家に泊まりに来たり、マリみたいに居候しているのも似ていて、「家賃とか出していないだから早く自立してよ」と思う気持ちも分かるし、でも来なかったら来なかったで「大丈夫かな?」と心配になるし、寂しくもなる。私の前では幼くて「24歳であんな子供で大丈夫かな」という気持ちもあるけど、妹って特別な存在だし、喧嘩することがあっても助けてあげたいという気持ちは強いと思う。映画ではケンカのシーンから始まりますが、妹のことを考えているし、大事に思っている。そこを感じてもらえるように演じました。

――妹さんに重ねていたから、より気持ちも持っていきやすかった?

 そうですね。マリに対する気持ちやお姉ちゃんの正義感はすごく共感できました。早く助けてあげたいけど、早く助けに行ったら妹が成長しないとか、そういう自立してほしいと思うところなど、いろんな気持ちが混じりあった複雑な心境という感じが私の中でしっくりときて。

――ユマが、危機的な状況になった妹を助けに行く場面がありますが、ボクシングをやっているけど、あのような環境で助けに行くのは怖いじゃないですか? それでも行くというのはやっぱりお姉ちゃんだったから?

 母親にも近いと思うんです。自分が犠牲になっても助けなきゃって。姉にとって妹はいつまでも守ってあげなくちゃいけない存在だと思いますね。

――素敵なお姉ちゃんですね。私はこの歳になってもよくケンカします。

 私たちもよくケンカはしますよ。それでも仲良くなれるのは、親のためでもあって。姉妹が仲いいことが親孝行だと思います。意見がぶつかるときはあるけれど、私がお姉ちゃんだから一歩下がろうとしています。

――映画のラストシーンで、マリがボクシングのワンツーを繰り出す場面がありましたけど、あれはやっぱり、普段からお姉ちゃんとやっているから自然と出たのでしょうか?

 普段から一緒にはやっていなのですが、あれはすごくかわいいシーンで、マリはお姉ちゃんに憧れて強くなりたいと思ってくれていて、一番最初のシーンにもありましたが、お姉ちゃんはいつもマリにクッションを持たせて練習の相手をしてもらっている。ジャブ、ストレートと打っているから、妹はボクシングをやったことがなくても、お姉ちゃんが「ワン、ツー」と言ったら自然と体が動く、それが垣間見えたとても可愛いシーンでしたね。お姉ちゃんも、マリに対して「強くなったな」って思えた瞬間だと思います。

板野友美
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さまざまな経験を通じて吸収

――ところで台本はすごく読まれる方だと思いますけど、びっしり書き込むタイプですか?

 書かないですよ。線も引かなくて、書き込む場合はノートにしていますね。役を演じるまでの役作りが大事というのは昔、秋元先生にも言われて、クランクインまではすごく考えて、でも本番が始まったら素で演じるというのが良いかなと思っています。

――自分がイメージしたものが現場に入ると変わるという話も聞きます。

 そうですね。相手がいるので変わります。でも今回は、読み合わせもありましたし、コウキとのシーンは監督と3人でも話し合っていたのでその段階である程度固まっていました。

――具体的にはどんな話を?

 やっぱり男らしい女性像が想像できなくて、どういう人をイメージしたら良いか、みんなに出していただいて。それでアニメのキャラクターがあって、そのアニメを見ていました。

――しかし、すごいですよね。役者は役を通していろんな経験が蓄積されるので。

 私もそう思います。ただ、演じるということについては、自分のなかにあるものが出てくると思うので、誰かになりきるというよりかは自分のなかにあるものを出しています。だから、いろんな映画や本、いろんな役を見たり、普段から人間観察をして、その役によって「こういう感じかな」と出せるようにしておきたいと心掛けています。

――よく歌だと、カバー曲でも自分のフィルターを通すことで自分の曲になるというのがありますけど、演技もそれに似たようなところがある?

 そうかもしれないですね。自分でやってみたらしっくりきたというのもありますし、自分のなかにある程度ないと嘘っぽいなとも思いますし、なるべく蓄積するようにしています。

――この間はラスベガスにと、いろんなところに行かれていますよね。それも蓄積の一つ?

 それはあまり関係ないですね(笑)。でも、色んなものを見たり感じたりすることで、直接は結びつかないけれど、どこかでその経験が役に立てればと思っています。普段からいろんなものを見て、吸収するようにはしています。

板野友美
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挑戦してみたい、“等身大”天真爛漫な女性の役

――先ほども話にありましたが、6月1日のワンマンライブは良くて。ストーリー性もあったし、パフォーマンス的にももう一段階上に行けたような気もします。

 嬉しい!

――女優業も活発になってきて、音楽もあって、すごく充実しているようにも見えます。今後はどうですか?

 6月1日のライブは久しぶりのダンスナンバーだったので、3カ月前からジムにも通って体力作りして。10月からはツアーも始まるので、それに向けて改めて体力づくりをします。それと、ミニアルバムが10月にリリースされることが決まっていて、6月1日のライブではダンスナンバーをたくさんやりましたが、今回のアルバムもダンスナンバーを中心にした作品にしたいと思っていて。それで10月からのツアーにはそれらを追加したものにしたいと思っています。お芝居では、『プリズン13』ではクール目な役でしたが、『愛しのナニワ飯』(テレビ大阪)ではテレビ局で働くADの役でちょっとだけ天真爛漫な自由な役でしたので、今後はコメディとか、天真爛漫な女性の役を演じてみたいなと思っています。それが本来の自分に近いと思うので、そういう役をやってみたいです。

――最後に、改めて『プリズン13』への思いを教えてください。

 見るのに目を手で覆いたくなるようなシーンもたくさんあると思います。人間が極限まで追い込まれるシーンもあり、人それぞれ様々な意見はあると思いますが、私自身はこの作品を通して、自分のことだけを考えるのではなくて、その人の立場になって、その人の気持ちを考えて行動することで、映画は小さな世界でしたけど、争い事がなくなったり、平和になる気がしました。お互いに知らない人が集まって、何も悪いことをしていないのに囚人役というだけでさげすまされたり、危機的な状況になると変貌したり、それこそいじめ問題じゃないですが、学校や会社という世界に置き換えても同じような事がおこなわれていると思います。マリのような正義感のある子がもっと強くあってほしいし、強い人が悪いことをするとみんな巻き込まれてしまうので、それを止められる人でありたいなと。難しいことですけど、一人一人がそう思えればいじめや今起きている社会問題が改善されていくのかなと思う。そういう意味でもこの映画を観てそういう問題とも向き合ってほしいなと思います。

あとがき

 「自分のなかにある程度ないと嘘っぽくみえると思う。だから色んなことを見たり、読んだり、経験したりして蓄積するようにしています」

 板野は今回のインタビューでそう語った。

 ここ数年、ドラマや映画の出演が続いている。芝居ともなれば、役を通じて様々な人生を経験する。その役に向き合い、どういう人間なのかを考え尽くす。やがてそれは自身に蓄積され、表現者としての新たな引き出しとなる。彼女の場合、それが音楽にも反映されていく。それが顕著に表れたライブがあった。

 さかのぼること約4カ月前。マイナビBLITZ赤坂のステージに彼女は立っていた。まばゆい光を浴びた彼女はマイクを持ったまま、多くの観客で埋め尽くされた場内を見渡し、笑みを浮かべた。昨年に次ぐワンマンライブ。最近はバラードが中心だったがこの日はダンスナンバーがメイン。キレのあるダンスだけでなく、女性の日常を切り取ったかのような物語性のある演出で観客を魅了した。その演出に彼女の表現者としての進化がみえた。

 「制限を決めずにやりたい」

 過去のインタビューで語った板野の言葉だ。挑戦の結果、様々なものが副産物として得られている。初のバンド編成でのライブしかり、初の作曲しかり。そうした一つ一つの経験が、「板野友美の物語」を華やかにさせている。そして本作『プリズン13』では、男勝りの格闘技ライターを演じた。妹を優しく見守りながらもいざとなれば危険を省みずに奮闘する。「男っぽいところ自分になかったものだったから役作りが大変だった。でも妹は妹に重ねました」。新たな引き出しと自身の経験を役に落とし込んだ。

 板野友美――、一人一人が主人公であるように彼女自身もまた物語の主人公である。歌手として、役者として、そして表現者として、本作もまた彼女自身を形成する大事なピースとなる。そして本作自体も彼女が演じたユマは大事なピースになっている。

(おわり)

撮影=木村武雄

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