音楽・インタビュー

ココロオークション「らしい曲をたくさん作る」メンバー間の理解深まった一年

ココロオークション
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 現在全国ツアー真最中の4人組ロックバンドのココロオークションが去る4月3日、メジャー通算4枚目となるミニアルバム『VIVI』をリリースした。昨年は3月にフルアルバム『Musical』をリリースし、音楽というものを追求。作品とツアーを経て見えたものは「好きなことに向かってためらわずに行動すること」だったという。そのテーマを体現した6曲を収録し、ココロオークションらしさあふれる1枚に仕上がった。アルバムの制作背景や、昨年4月~7月にかけておこなった全国ツアー『ココロオークション TOUR 2018「Welcome to the Musical」』を経て、メンバー同士の理解が深まったと話す経緯に迫った。【取材・撮影=村上順一】

『Musical』ツアーは修行だった

――昨年はフルアルバム『Musical』をリリースし、全国ツアーもおこないました。新たな発見や気づきはそれぞれありましたか。

井川 聡 前回のインタビューで音楽を追求するとお話しさせていただいたと思うんですけど、その中で自分のドラムについて、この1年間めちゃくちゃ考えました。そのおかげもあって自分のドラムを冷静に判断できるようになりまして、ライブがめちゃくちゃ楽しくなりました。

テンメイ メンバーのことを考える時間が増えたなと僕は感じています。メンバーがどんなことをしたいのか知ることが出来たのが「Welcome to the Musical」ツアーでした。今作でそれを消化することができたんじゃないかな、というのが凄く伝わってきました。

大野裕司 構築美を追求したのが『Musical』で、ツアーではそれも含めた空気感も作り上げることができたなと思っていて、目標に向けてそれぞれが頑張ったし、4人が進化できたなと感じていて、駆け抜けた1年でした。昨年がもし『Musical』という作品でなかったら、また全然違ったバンドになったんじゃないかなと思えるほどです。辛かったけど、修行したという感覚もあって、なくてはならない1年になりました。

井川 聡 確かに修行でした。

――あのアルバムを再現するにあたって、ツアーは相当緊張感があったんじゃないかなと思いました。

井川 聡 本当に緊張感が凄くて、僕は特に「砂時計」とか。

粟子真行 『Musical』をリリースしてからは本当に音楽と向き合う事が多くなって、それぞれが音楽的にレベルアップしたのもそうなんですけど、さっきテンメイも言ってましたけど、メンバーそれぞれを深く理解するきっかけをくれた作品だと思っています。なかなか演奏が纏まらない時もあって、それ以降メンバーと話し合いをすることが増えました。音楽だけではなくて、それこそ学生時代に戻ったかのような他愛のないこととか。それもあってリハも増えたりしました。前作で構築美を作り上げたので、今回はそれを壊そうと、また楽しく熱量を持ってみんなで音を鳴らせているなと感じています。

――その『Musical』を経て、今作『VIVI』は原点回帰の部分もあったのではないかと感じました。それを今のココロオークションでやったらどうなるかというような。

井川 聡 まさにそのとおりです。

――たくさん話し合いもされたとのことで、みなさんは長い付き合いですが、新たに分かったことは?

粟子真行 良い意味でみんなバカだったということです(笑)。みんな30代が近づいてネジがぶっ飛んできた感じもあって、そこも含めて愛せるようになりました。

井川 聡 それが良い空気感にも繋がっているのかなと思います。

大野裕司 自分は最近はメンバーが持っている個性とか人間味も音楽の一部に捉えられるようになったかなと思います。今までは音楽に必要なものというのを自分の中で狭めてしまっていて、面白い人間性が良い音楽に繋がるかといえば、関係ないと思い込んでいた時期があったんです。今はそんなことはないと思えるようになりましたし、今までも無駄ではないんですけど、追求するということは聴く人、観る人からしてみたら大したことではなくて、それよりも観ていてもっと魅力的なものをメンバーはもともと持っていたんだなと言う気付きがありました。それを出して「良し!」と思えるようになったのは、自分としては大きな変化です。

好きなことに向かってためらわずに行動する

――今作のタイトルが『VIVI』ということですが、これは「ハンカチ」の歌詞にもある<ビビンときたんだぜ>から取って?

粟子真行 確かにそこもあるんですけど、今作のテーマが「好きなことに向かって躊躇わずに行動する」というのを掲げているんですけど、好きなことというところで話し合いをしている中で大野から「VIVI」という言葉が出てきました。はっきり、くっきりという意味を持つビビッドをもじっているんです。あと『VIVI』という響きが可愛くて、ビビッと来て一目惚れしてしまって(笑)。

井川 聡 凄く良い単語なので今これにあった企画をいろいろ考えてやっています。

――クイズやゲームなど今既にやってますよね。さて、お一人ずつ今作のおすすめ曲などお聞きしたいです。

テンメイ 今回、最初にビビっときたのは「ハンカチ」でした。どんな曲があったら良いかという打ち合わせの時に、「恋愛系の曲があったらいいな」と思っていたところに「ハンカチ」が来たんです。今回のテーマが「好きなことに向かって躊躇わずに行動する」なので、全体的にまだ踏み出せていない人が一歩踏み出せるような歌詞が今作には多いんですけど、その中でもキュンとする曲なんです。僕がそういう曲を欲していたんですけど(笑)。

――ちなみにギターでは新しい試みはありましたか。

テンメイ 新しいというわけではないんですけど「アイデンティティ」は、ダウンピッキングでもう腕がパンパンになります。この曲はパワー系とでもいいますか(笑)。僕はアルペジオや単音を弾くギタリストだというイメージがあると思うんですけど、今まであまりダウンピッキングのロック的なアプローチってしてこなかったなと思って。それもあって久しぶりにスタジオで汗をかきました。勝手に熱くなってしまう、曲がそうさせてくれる感覚があるのが「アイデンティティ」なんです。

井川 聡 「ハンカチ」も「向日葵」もすごく捨て難いんですけど、「アイデンティティ」が特に気に入っています。今作の中でも特にパワフルな一曲で、ドラマーとしても凄く荒々しくて叩きがいのある1曲なんです。ドラムのフィルにこだわってレコーディングしたので、曲に馴染んでしまっているので聞き取りにくいかもしれないんですけど、ドラムをやっている方はコピーして欲しいです。それぐらい熱や技術が詰まった曲になりました。

――さすがに初心者の方には難しいですよね?

井川 聡 初心者は難しいかもしれないですけど、中級者以上の方にはやりがいがあると思います。初心者の方には「手のひら」が今作の中では一番やり易いかもしれないです。この曲は昔からあった曲で、シンプルなことを追求していた時代の曲なのでやり易いかなと思います。

――そこから慣らしていって最終的に「アイデンティティ」にたどり着いてもらえたらという感じですね。粟子さんの推し曲は?

粟子真行 すごく絞るのが難しいんですけど「ハンカチ」です。この曲は0から1にするところから担当させてもらって、サビのメロディもたくさん考えて出来た曲なんです。あと『VIVI』という作品は全体的には歌い方を変えました。

――確かに凄く変わったなと思いました。意図的だったんですね。

粟子真行 意図的に変えました。レコーディングの時も「この(歌詞の)行どう思う?」と大野と相談して録っていきました。聴いてくれた人に刺さるようにというのを意識して選んでいきました。「ハンカチ」の2番のAメロの<どこかで聞いた>の語尾や、ビブラートを掛けるか掛けないとか凄く考えて歌いました。今までは素直に出たもので歌っていたんですけど、カラオケとかで他のアーティストの曲を歌う時にすごくクセをつけて歌うんですけど、自分の曲となると自分のことをあまり知らないので、自分のことをあまり理解せずに歌っていたんだなと思うところがあって、自分なりの歌い方やクセを研究して見直しました。それを今回実践してみたんです。新たな自分になれたといいますか、自分を変えるというところを体現できたのではないかなと思います。

――分析したんですね。

粟子真行 分析というところで、地元で尊敬するシンガーソングライターの先輩がいまして、一緒に飲みに行ったんです。そこで「今僕はどんな歌を歌えば良いのかわかりません」と相談しました。そうしたら「自分のこと知らないんじゃない?」と話してくれまして。それで一緒に自分の性格とか分析したんです。幼少の頃から振り返って、なぜこういう性格になっているのか、それは小さい時に入院していて寂しかったからとか、でもずっと歌っていたんだなとか、ちょっとずつ自分のことが分かるようになってきて、「それを曲にしてあげないとダメだよ」とアドバイスを頂いて「タイムレター」が出来ました。この曲が書けたおかげで、こんがらがっていた糸を紐解いていって、自分が何を好きなのか、喜びを感じるのかというのが分かったんです。この曲が生まれたというのは自分にとって大事な分岐点になるんじゃないかなと思います。この歌があるから今自分はしっかり立てているんだなと思います。

――何が好きなのか、それが歌やバンドだったりしているわけですよね。ちょっと話が戻るんですけど、「ハンカチ」はなぜこのタイトルにしようと思ったんですか。他にも色々つけられそうな曲だなと思いました。

粟子真行 <ダサいハンカチ使ってるのもすごくいい>という歌詞がキーワードになっていて、タイトルはイメージできる名詞にしたかったんです。デモのときから「ハンカチ」で、その後も色々考えたんですけど、結果的にこれを超えるものが出なかったんです。

大野裕司 「タイムレター」と「ハンカチ」は対局にあると思います。「タイムレター」は過去の自分に当てた手紙ということでそのまま読んでいっても面白いと思うんですけど、「ハンカチ」は逆で最後にこれはラブレターの下書きということが明かされるので、タイトルが「ラブレター」だとわかって読んでしまうので面白くないんです。タイトルの使い方というのは重要です。名詞をタイトルにするとその人それぞれの思い出があるので、曲への印象が変わるんです。

――確かにそうですね。 「ハンカチ」という言葉だけでもそれぞれイメージすることが変わってきます。さて、大野さんの印象的だった曲は?

大野裕司 僕は「タイムレター」です。トラック作りで一番時間が掛からなかったのが「アイデンティティ」で、一番時間が掛かったのが「タイムレター」なんです。「タイムレター」は、流れを止めない一筆書きみたいな感じにしたくて、1番を作るのが凄く時間が掛かりました。サビが3種類といっぱいあるんですけど、そういうアレンジにするというのが個人的に凄く気に入っていて『Musical』でやっていたことの延長にあって、概念を壊せた曲になったんじゃないかなと思います。

――前作からの流れもありつつ、新しいエッセンスも?

大野裕司 今回は新しいビートというのは求めてはいなかったんですけど、そこにどんな楽器を乗せるかでグルーヴに新しい、古いというのが出てきてしまうんです。一回できたんですけど、それもあってグルーヴが硬いと感じて、本当にちょっとしたことなんですけど、音符を16分音符後ろにずらすとか、それだけでノリが変わるんです。今までも分かってはいたけど、目的を持ってアレンジするところまではいけてなかったんです。それがやっとできるようになったので良かったと感じています。

ココロオークションらしい曲をたくさん作る

ココロオークション

――先ほど粟子さんが「ハンカチ」は0から1にしたと仰っていましたが、普段は大野さんのトラックから作ることが多いんですよね?

大野裕司 そうですね。今回はトラック先行で一番良いものを、メロディが良ければメロディ先行で一番良いものを作るとういうやり方なんです。「ハンカチ」に関しては別の曲から一番いいメロディをくっつけて制作したんです。他の曲のサビだったものがAメロやBメロに使われています。サビとしては弱かったけど、AメロBメロだった凄く良いみたいな感じで組み合わせて作りました。それでアコースティックでやってみて良い曲になったのでそこからトラックを作っていって。

――ある意味サビの集合体の曲なんですね(笑)。「手のひら」もザ・ビートルズ的な感覚がありますよね。ずっとサビみたいな。この曲はタイアップが付いたことで収録することになったんですか。

大野裕司 そうです。あと今はもう流通していないインディーズ時代のアルバムに入っていた曲なので、入れたいなと思ったのもあります。変えたところはグルーヴのところが大きいです。オリジナルより素朴にしたと言いますか。

――オリジナルのときはテンメイさんはまだ加入されていなかったですよね。

テンメイ いなかったです。なのでライブでは弾いていたんですけど、レコーディングは初めてでした。でも、あまり深く考えずにオリジナルのギターアレンジが良かったので少し変えたところはありましたけど、割と元の演奏に忠実に弾きました。

――完成度が高い一曲だったと。でも、歌は結構変わりましたよね?

粟子真行 そうですね。歌が一番変わったと思います。特に語尾とか。

テンメイ <君の後ろ姿>のところとか。

粟子真行 以前の歌は怪獣が炎を吐くような感じで、ガーガーっと全部同じ投げ方をしてしまっていたんですけど、今回アプローチの仕方は全然違います。

――聴き比べてみたいですね。さて、順番が最後になってしまったんですけど、一曲目に収録されている「RUN」はいつ頃作られたのでしょうか。

大野裕司 デモは昨年の夏頃からあって、デモの段階から良いなという実感があって、アルバムを作るとなってこの曲は収録しようというのが既定路線でありました。この曲と「向日葵」が軸になっていました。この曲があるからアルバムは大丈夫という安心感もありました。

――僕の中ですごくココロオークションっぽい曲だなと思いました。

テンメイ それ、僕も思いました。

粟子真行 実はこの曲のトラックをもらった時、メロディをつけるのに全然迷わなかったんです。多分僕を意識して作ってくれたというのもあると思うんですけど、自分が歌いたいようにメロディの線を描けた曲でした。なので凄くしっくりきて、この曲は絶対アルバムに入れたいなと思いました。歌詞のメッセージもしっかりと僕らが言いたい事を言えていると思います。

――凄く良い感じにできたことが曲からも伝わってきました。さて、らしさあふれるアルバムが完成しましたけど、この先、ココロオークションはどのような展望がありますか。

大野裕司 『VIVI』と『Musical』は対になる作品だと思っていて、どちらもその時の全力を尽くしています。『VIVI』を聴いて『Musical』を聴いたらこんなこともやるんだと思ってもらえると思いますし、逆もそうです。この2作ですごく振れ幅が出来たと思います。

 僕らのセンスになってしまうんですけど、良い曲であれば何をやっても大丈夫なんだということがわかりました。今までは新しいものにベクトルを置いていたのですが、自分たちが良いと思えるものを新旧問わず作りだしたいし、これからはココロオークションらしい曲をたくさん作るというのが重要かなと。

――センスもより磨かなければいけない?

大野裕司 センスを磨くことも大事なんですけど、それよりも良いか悪いかの2択をスピーディーに判断出来ることが重要なんです。それは、メンバー全員大丈夫だと思います。

――ありがとうございます。さて5月からはツアー『ココロオークション TOUR 2019』も始まります。

井川 聡 今作はココロオークション史上1番パワフルなアルバムになりました。このアルバムを聴いて待っていて欲しいのと、アルバム曲は今年に入ってから何曲か披露しているんですけど、めちゃくちゃ盛り上がってくれているので、全公演びしょびしょになれると思うので覚悟していて下さい!

(おわり)

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